2013年09月08日

「人間」の境界線/沖縄「屈辱の日」

 【PUBLICITY 1935】2013年9月7日(土)
「人間」の境界線――沖縄「屈辱の日」

offnote@mail.goo.ne.jp

▼明らかに共通点があるのだが、言葉にするのが難しい。そう
感じるコメントを相次いで目にした。何回かに分けてメモして
おきたい。まず、2013年6月20日付朝日新聞に載った、
琉球放送キャスター・比嘉俊次の声を紹介したい。テーマは「
4月28日」、いわゆる「屈辱の日」だ。



▼沖縄では今、サンフランシスコ講和条約が発効した1952
年4月28日を「屈辱の日」と呼んでいるが、そもそも当時、
琉球政府の行政主席は「条約の発効を祝う言葉」なる声明を発
表しているじゃないか。メディアは真実を伝えていない。沖縄
は嘘つきだえとせとら……こういう攻撃がネットの中で広がっ
た。

比嘉はこうコメントしている。「当時の行政主席が、米国の意
に反するようなことを言えるわけがない。ちょっと考えれば分
かることです。米国の傀儡(かいらい)なんですから」

さらに「人間は見たいものだけ見て、自分が望むように解釈す
る」「(インターネットは)相手を論破するための証拠探しに
ばかり使われているような気がします」と語っている。

完全に同意だ。

▼しかし、沖縄を非難するために「見たいものだけ見ている人
」にとって、「証拠」にならないものに価値はない。

だから米国の意に反することを「言えるわけがない」当時の政
治的文脈や、「傀儡」という言葉に染み込んでいるほとんど無
限とも思える豊かな意味内容は、そこからこそ沖縄の真実=日
本の真実の一端に触れることができるにもかかわらず、「証拠
探しゲーム」のプレーヤーにとって、何の価値もないし、1ミ
リの興味も関心もない。

▼どうも、乗っている「土俵」が違うっぽいのだ。

彼らが「傀儡」という重層的な言葉や、「言えるわけがない」
という当たり前の文脈を、本当に理解できない(=能力不足)
のか、無視している(=悪意)のかはわからない。

どちらにしても、「当時祝ってたくせに今ごろ『屈辱』とかほ
ざくなよ」的な言葉を発する日本人は、沖縄に住む人々を【人
間扱いしていない】ように感じる。

▼2013年4月30日付の朝日記事(岩崎生之助記者)は、
象徴的だった。

今年の1月27日、沖縄の人々が、東京の銀座でオスプレイの
配備撤回を求めるデモをおこなった。

沿道から「売国奴!」「日本から出て行け!」という罵声が浴
びせられた。その動画がアップされたサイトに、「愛知県の5
0代の主婦」は自宅から「公務員はいい身分で、反日活動ご苦
労様」と書き込み、「40代男性」は「オスプレイに反対して
いるのは在日朝鮮人」と書き込んだ。

「沖縄タイムスは、デモの周囲で配備反対を訴える特別版約1
000部を配るのをやめた。社員の安全が確保できないと判断
した」

また、デモの2日前、「近くのギャラリーで戦後の沖縄で起き
た米軍機事故の写真展を開いた」。死者32人、負傷者234
人。沖縄の人たちは知っているが、本土の人たちは知らない、
典型的な歴史の一つである。

「ほどなく20人ほどの男女が会場に現れた。ぐるっと見て回
った後、平良局次長らに「オスプレイ反対のための展示か」と
詰めよった。先導したのは政治団体「頑張れ日本!全国行動委
員会」。取材に水島聡幹事長(63)は「どんなことを発表し
ているかみんなで見に行った。抗議でもなんでもない」と言っ
た」

▼琉球放送の比嘉は「沖縄にとって、基地は政治ではなく、騒
音など生活の問題なのです」と言う。この「生活」の問題が、
東京発のマスメディアで殆ど報道されない理由は、本土の人間
の眼には、「沖縄人」が【人間として映っていない】からだ、
と考えれば、説明がつく。

「人間の境界線」は物理的な距離で決まるわけではない。比嘉
は、沖縄の基地被害が生活問題であると訴えた直後、「福島に
とっての原発が、エネルギー政策の問題でないのと同じだ」と
続けている。

福島の一部は、文字通り「人間の住めない土地」になった。そ
の近くに住む人たちが「人間扱いされなくなる事態」を避けた
い。そのためにも今、あちこちで作動している「差別を正当化
する回路」を浮き彫りにしたい。「傀儡」とか「言えるわけが
ない」とかいった言葉が気になる由縁だ。

「その回路のヒミツって、これなんじゃないの?」「この動き
とリンクしてない?」という政治思想的・経済思想的・文化思
想的・風俗思想的なヒントがあれば、教えてくださいね。

(つづく)

2013年7月6日了 竹山綴労
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