【PUBLICITY 1934】2013年7月6日
日の丸が泣いている――人種差別の報道考 その2
offnote@mail.goo.ne.jp
▼在特会の人種差別デモがどれほど凶暴か。現場であの大音響
の罵倒に頭蓋骨を震わせてみないと、本当にはわからないし、
いや、所詮、ニッポン人にはわからないだろう。
「良い韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」「朝鮮人は皆殺し
」(2013年6月8日付東京新聞)、「ゴキブリ、ウジ虫、
朝鮮人。お前らを一匹残らずたたきつぶす」(2013年6月
18日付毎日新聞)、女子中学生が「鶴橋大虐殺を起こせ」と
叫び、大人たちが拍手喝采を送る(2013年7月3日付東京
新聞)。
こうした在特会デモの言葉は、新聞、雑誌にそこそこ報じられ
ている。YouTubeで検索すれば動画も簡単に見つかる。それら
から、少しは現場の恐怖を想像することができる。
ぼくの場合、コリアンタウンの旨い焼肉屋に行く途中、あの暴
力集団に出くわした。「血が凍る」ってのはこういうことか、
と感じた。彼らにこそ「暴力団」の名が相応しいと思った。
▼警察が在特会のあの朝鮮人いじめを野放しにするのは無理も
ない。なにしろ日本政府は朝鮮学校をわざわざ高校無償化から
排除しているのだ。政府が人種差別政策をとっている以上、警
察組織がその方向に逆らって動くはずはないだろう。
平成の世になって、朝鮮学校の女子生徒がチマチョゴリを切り
裂かれても警察はろくに捜査せず、あの美しい民族衣装を街中
で一切見かけなくなった。
5年後に日の丸が法制化された。その日の丸を高く掲げて、今、
子連れのお母さんや制服姿の未成年の女の子が街を練り歩き、
在日コリアンに罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせ続けてい
る。
▼どう報ずるか。ぼくの尊敬するある人が「無視すべし。安田
浩一氏の『ネットと愛国』は良書だが、あれが彼らを増長させ
てしまった」「悪質な政治家から在特会に対して経済的援助も
出ている。むしろそこを叩くべきだ」と言っていた。そうかも
しれない。実際に在特会に対するエールを公言する議員もいる。
8月15日を前後して、人種差別の嵐が狂気の度を増すかもし
れない。ぼくは彼らの発言を「包み隠さず報道」するだけでは
足りないと思う。彼らに対抗する運動に光を当て、ぐっと重点
を移せば、新しい報道のかたちが生まれるのではないか。
▼発表報道漬けの仕事に慣れた人たちにとっては「民間」対「
民間」の闘いなんて不向きな取材だろうが、「人種差別に関す
る全国会議員アンケート」や「外国人100人に在特会デモを
見てもらいました」えとせとら、手軽で価値的な企画もあろう。
そこらにいる人が、暴力に対して知恵と勇気で立ち向かう。そ
の生活感情と葛藤こそ、ジャーナル=日々の記録に馴染(なじ
)む。新しいニッポンの自画像が浮き彫りになるかもしれない。
人種差別をめぐる「客観報道」とは、差別されている側に立っ
た「主観報道」である。「中立的立場」に立つとは、いじめら
れている人々の側に立ち、徹底的に「偏向」する勇気を持つ、
ということだ。(了)
2013年7月6日 竹山綴労
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