夢だとわかって
目が醒めないから
夢中と呼ぶのよ
覚えときなさい
中島みゆき「新曽根崎心中」
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◆今号のポイント◆-------------------
菅首相の「浜岡原発停止」要請は、その「動機」が不純だとか
「説明不足だ」とか「法律にのっとっていない」とかの愚かな
理由で否定されるような政治決断ではない。
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▼3月11日から1週間ほどは、固唾を飲んで見守った。「い
つメルトダウンするか。水蒸気爆発するか」と、生きた心地が
しなかった。ようやく3月が終わり、桜が咲き誇る頃になって
、「ああ、不幸中の幸いだった」と感じた。
事態は二転三転どころではなく、二十転、三十転し、5月6日
の夜には、なんと菅首相が「浜岡原発の全面停止」を中部電力
に要請した。正真正銘、「前代未聞」の大ニュースであり、各
紙の反応が実に興味深い。
▼各紙社説を見ようと思うが、その前に、特筆すべきは毎日新
聞だ。白抜きの黒い凸版で「東海地震の震源真上に」と大きく
掲げた。これが停止する最大の理由であり、誰がみてもわかる
割り付けになっていた。
日経も同じ主旨を凸版にしたが、こちらは肝心の「東海地震」
をなぜか外しており、不十分だった。
▼これまで本誌で実証した、「マスメディアとつきあう」ため
の法則の一つは、「国策は讀売・産経の論調で動く」だった。
おさらいのために書いておくと、朝日、毎日、共同通信、ブロ
ック紙、県紙がいくら反対の論陣を張っても、自公政権期、対
米政策をはじめ国策の多くは、讀売と産経の論調の方向へ動い
てきた。
それは最近だと、「アメリカによるビンラディンの暗殺」に対
する反応、評価をみればわかる。尤も、讀売・産経が国策を練
り、世論をつくり、官僚と政治家を動かしているわけでは毛頭
ない。その逆であり、官僚や政治家とマスメディアとの距離が
あまりにも近いため、恰もマスメディアが国策をリードするよ
うにみえるわけだ。
この特徴は、実は讀売・産経以外の新聞にも多かれ少なかれ当
てはまる。一紙ごとを見ているだけでは、ニッポンのマスメデ
ィア独特の構造は決して見えない。
▼しかし、少なくとも「浜岡原発停止」については、この法則
はあてはまらない。鳩山首相の「最低でも県外」発言の時もそ
うだったが、これはしばらく措く。
毎日や東京や朝日が主張し続けている脱原発の方向に向かって
、時の首相が発言したのだ。讀売と産経は面白いくらい猛反発
である(勿論、日経も)。これまでのマスメディアと国政の関
係が変わった。これが「浜岡原発停止発言」から見える大きな
動きだ。
▼共同通信解説委員の太田昌克が3月13日付の論説で、「原
発震災の拡大防止が一段落した後、原子力政策を根本から見直
す必要がある」と書いた。まったくもって正論だが、この正論
が通らないところに、解くべき謎が潜んでいる。
▼ゴールデンウィークに入ったあたりで、すでに原発事故が「
過去」のことになりつつある気配を感じたが、“本当の主役”
である経産省の意図と行動が、報道によって浸透され始めよう
としていた矢先の、「浜岡停止」発言だった。さらに、ちょう
ど前後して共同通信が、経産省の今後の思惑をすっぱ抜いた。
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経産省、原発重視の方針堅持へ 安全宣言で電力確保目指す
2011/05/06 22:06 【共同通信】
原発の緊急安全対策を進めて「安全宣言」を早期に行うことで
既設の原発からの電力供給を確保し、2030~50年には「
世界最高レベルの安全性に支えられた原子力」を3本柱の一つ
とするとした、経済産業省の今後のエネルギー政策に関する内
部文書が6日、明らかになった。
14基の原発の新増設を盛り込んだエネルギー基本計画を含め
、菅直人首相が政策の白紙からの見直しを表明、中部電力浜岡
原発の停止を要請するなど、これまでにない政策を進める中、
従来の原発重視を堅持する方針を早々に打ち出したことには今
後、各方面から批判が出るのは確実だ。
文書は、東日本大震災を受けた現行のエネルギー政策の課題に
関するもの。事故で「原子力の安全確保に大きな疑問符」がつ
いたとの判断から、「原因の徹底究明と安全規制の抜本見直し
を進め、将来のエネルギーとしての適格性を判断する」としな
がらも「今後のエネルギーのベストミックス」の一つとして「
安全性を最大限追求した原子力」を掲げた。
その上で、30~50年に向けた長期的なエネルギー政策の3
本柱の一つとして、太陽光発電などの再生可能エネルギーの拡
大、ライフスタイルや産業構造の改革による省エネルギーの実
現とともに「世界最高レベルの安全性に支えられた原子力」を
据える考え方を示している。
また、定期検査で停止した原発が再稼働できない状態が続くと
、今後1年間で全国すべての原発が停止して地震直前に比べて
3千万キロワット以上の供給力が失われると電力危機を強調。
「緊急安全対策の徹底(安全宣言)により、既設炉からの電力
供給を担保」するとの方針を示した。
再生可能エネルギーについては今後拡大する方針を示したもの
の「太陽光発電のコストは原子力の約7倍」「電力の安定化対
策として蓄電池の大量導入など年間数千億円が必要」など、こ
れまでの評価の記述をほぼ踏襲している。
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▼この経産省の文書に共鳴する論調が、讀売・産経・日経で、
いつものとおり、それ以外の毎日・東京・朝日と多数の県紙が
浜岡原発停止に好意的である。
▼菅首相の浜岡原発停止要請に無数の批判がわきおこっている
が、政治家に求められる最大の責任は「結果責任」である。た
とえ動機が「世論に阿るため」であれ、「党内の反対勢力の機
先を制するため」であれ、それらは全ての政治家に宿る業であ
り、讀売や産経が騒いでいるほどの価値はない。当の記者自身
が自覚しているはずだ。
▼また「説明不足だ」とか「法律に基づいていない」という理
由で浜岡停止を全否定する人がいるが、「政治決断」とは常に
説明不足であり、法律を超えた決断であり、これも程度の問題
に過ぎない。そもそも政治家とは、無法の分野に「法律をつく
る」のが仕事だ。
原子力政策という、核武装に直結する「国策」を転換させうる
政治決断を、菅首相は行なった。つまり「国策」に従事し・主
導してきた経産省と経団連の人々を、丸ごと敵に回したのだ。
何よりアメリカが現政権を見放し、菅降ろしの具体的な行動に
既に出ているかもしれない。
▼開高健はベ平連の合言葉として「才ある者は才を。財ある者
は財を。力ある者は力を」と書いた(順番失念)。原子力=核
開発の推進という国策に生きてきた人々は既にこの言葉を忠実
に実践している。
おそらく菅政権の言動はこれから大きくぶれるだろう。動機が
「支持率」にあることは明らかだしね。ぼくは核開発を国策に
掲げてきた人々の根拠が幻であることを証明し、広げるために
、開高の言葉に従おう。
(つづく)